室戸海洋深層水「天海(あまみ)の水」や「赤穂の天塩(あましお)」、「熱中対策水」などの商品でお馴染みの赤穂化成株式会社(本社・兵庫県赤穂市、池上良成代表取締役社長)。
このほか豆腐の製造に欠かせない「にがり」や医薬品などに使われる化成品などの事業者向け製品など、数々の製品も生み出し、「ミネラル」と「健康」をテーマに、新しい海洋文化を創造し、価値ある商品を提供中です。
今回は、赤穂化成マーケティング本部の坂本力也さんと野中香映さんにおススメの商品についてお話をうかがいました。
赤穂化成株式会社 マーケティング本部

坂本力也さん

野中香映さん
赤穂東浜塩田」をルーツに持つ

ーーまず赤穂化成さまの企業紹介からお願いします

赤穂化成は本社の所在地は、塩のまちとして知られる兵庫県赤穂市で、「赤穂東浜塩田」※をルーツに持ちます。赤穂東浜塩田は1626年に開墾が開始され、塩田時代から数えると、まもなく創業400年を迎えます。
1971年、第4次塩業整備※により日本の塩田が廃止されたことをきっかけに、赤穂化成が誕生しました。
塩田による塩作りが禁止されたため、塩作りの技術を応用し、海水に含まれる「にがり」などのミネラル成分を食品の原料や工業用に製造販売する赤穂化成として生まれ変わりました。ここで一時期、塩づくりを休止しました。
※第4次塩業整備・・・農耕的な塩田製塩が終焉し、化学工業的な大量生産をめざした塩の近代化を展開した国策を指す。
※赤穂東浜塩田・・・千種川の東に約150haまで拡大した塩田。入浜塩田による塩づくりの技術は、瀬戸内海沿岸を中心に各地へ伝えられ、やがて近世日本の製塩を席巻する。





1971年(昭和46年)には、塩づくりがイオン交換膜製塩法に変わり、高純度の塩が流通することにより、昔の日本の塩の味を取り戻す消費者運動「自然塩運動」が起こり、そのうねりは全国に波及します。
消費者の声を受け、日本で塩田による塩作りはできませんが、海外の塩田の塩を輸入し、加工することで日本の伝統の塩に近い塩を作ることが国から認められました。
こうして専売塩に対して、民間塩第1号として私どもの「赤穂の天塩」が誕生しました。
ちなみに、赤穂化成は、「赤穂の天塩」の製造会社で、販売会社は、株式会社天塩(東京都新宿区)です。同社は、株式会社自然塩普及協会として発足、自然塩の普及活動と事業展開をするとともに、赤穂化成に対して、自然塩に近い塩の製造を依頼し、販売会社となった経緯があり、現在で設立51年目になります。
昔は別会社でしたが、今は両社ともグループ会社です。



今のお話を捕捉しますと、忠臣蔵で有名な浅野家は江戸時代に赤穂を治め、塩田開発を積極的に行いました。その後、塩は専売になり、赤穂東浜塩業組合を設立。1947年(昭和22年)に同組合に化成品部門が設立され、海水に含まれる成分の特性と機能の研究を進め、食品・工業用などの多方向に使用される商品開発をスタートし、化成品のビジネスを展開。それが赤穂化成に受け継がれました。
赤穂化成は主に塩を扱う調味事業の他に、化成品事業、機能材事業、食材事業、健康事業の全5事業を展開しております。様々な分野に事業展開をしておりますが、根幹にあるのは塩田をルーツとした無機化学工業です。
化成品事業では トップシェアを誇る塩化マグネシウムの他、 幅広いラインナップの無機塩類製品を展開。工業用原料の他に、食品添加物、肥料、医薬品原料、ファインケミカル原料、防塵剤、凍結防止剤など様々な分野で活用されています。
次の機能材事業は、 急速に発展する電子部品にも対応した、高機能・高品質の素材を開発・提供しています。3番目の食材事業は、 創業当時から、豆腐の製造に欠かせない凝固剤サプライヤーとして業界を牽引してきました。
凝固剤の販売だけにとどまらず、豆腐メーカーに寄り添う技術提供をしております。 4番目の調味事業は、 江戸時代から赤穂に伝わるにがりを含んだ差塩製法※を継承し、伝統製法と新しい技術を組み合わせた塩をラインナップ。最後の健康事業は、 ミネラルの可能性を引き出す技術によって幅広い生活者の健康に貢献する製品を提供しています。
赤穂化成は現在、約50年以上にわたり「赤穂の天塩」をはじめ、全国のスーパーに並ぶ商品を生産しています。
※差塩製法・・・350年前より赤穂に伝わり、にがりを戻す(差す)塩づくりによって仕上げると、おいしい塩ができあがる。海の恵みであるにがりが素材の味を引き出し、お料理の味わいを深める。
にがりを含ませてつくる「赤穂の天塩」


ーー「赤穂の天塩」の特徴を教えてください。



赤穂にはかつて「東浜塩田」と「西浜塩田」がありました。東浜塩田では差塩製法という独特の製法によりにがりの量も多いことが特徴でした。この東浜の塩は主に江戸や東側の地域に送られ、西浜の塩は京都や大坂などの上方地域で消費されていたのです。「赤穂の天塩」はにがりが多いことが特徴です。
ここで浅野内匠頭(たくみのかみ)が吉良上野介(こうずけのすけ)に対して江戸城松の廊下で刃傷沙汰に及んだ件についてお話しします。吉良が浅野に塩の製法を教えてもらうよう依頼をしましたが、浅野が断ったことを恨み、吉良が浅野に数々の嫌がらせをし、浅野がついに我慢が出来ず事件を起こしたとの説がありますが、これには違和感があります。
赤穂藩は塩の製法の指導を全国で行っており、特に瀬戸内には「入浜式塩田」※の普及を進め、播磨、備前、備中、備後、安芸、周防、長門、阿波、讃岐、伊予の旧10か国に赤穂流の塩田を伝え、十州塩田と呼ばれるほどになったほどです。ですから秘密にしていたわけではないと思います。
東浜塩田では石垣を築いて、強固な堤防を形成しました。赤穂の近くの姫路城の石垣の築城技術が赤穂の塩田に伝わり、しっかりとした堤防が完成したと聞いています。この入浜塩田の技術が瀬戸内の十州に伝わっていき、規模も大きな塩田を形成していきました。
※入浜塩田・・・潮の大きな干満差を利用して海水を自動的に塩浜へ導入する方法で、瀬戸内十州を中心に遠浅の海浜に堤防を築き、その内側に造られた。



赤穂藩の石高は時代によって異なりますが、こうした塩の販売で石高以上の収入もあり、財政も豊かであったと考えています。


ロングセラーになった海洋深層水「天海の水」
ーーロングセラーの海洋深層水「天海の水」の特徴はいかがですか。



塩の自由化※以前に国内の海水を使い、塩をつくる試みをしていたときのことです。そこで高知県室戸沖の海洋深層水と出会いました。塩をつくる際、残りの97%を占める海洋深層水は捨てていました。しかし海洋深層水の中にミネラル、カルシウムとマグネシウムが含まれているので。新たに健康飲料として商品化、「天海の水」として販売しました。
一方、海洋深層水の塩では「天海の塩」という名称で、さらに海水を煮詰めて塩を採った後に残る透明の液体であるにがりを「天海のにがり」として販売しています。天海シリーズで最も好評なのが「天海の水」です。健康志向の時代にマッチし、20年以上販売を続けています。
今、「天海の水」では硬度1000と硬度250の硬水と準硬水をメインで販売し、逆浸透膜という膜を使い、硬度0の軟水とすることも可能です。最近では硬度0で5年間の長期保存ができる備蓄水がよく売れています。





1997年(平成9年)に政府は、塩の専売を廃止し、自由に製造して良いことになりました。日本の高度成長時代、瀬戸内海は度々赤潮が発生し、赤穂の海水を使った塩作りは難しい。赤穂化成は海水を濃縮して、塩づくりを行いますから、海水がキレイなことが条件です。
キレイな海水を探していく中で、室戸海洋深層水との出会いがあったのです。元々は塩づくりが目的でその過程で、深層水、ミネラル、にがりもあるため、活用した商品を次々と開発しました。
塩を採った後に水、ミネラルなどが残り、組み合わせてミネラルのバランスを調整し、硬度の高い水、そして逆に軟水もつくれます。赤穂化成は当初、ミネラルの多い水を提案し、実際ヒットしたのですが最近、災害や地震の発生を肌で感じられている方が増えています。
災害現場ではミネラルを含まない水の方が赤ちゃんのミルクや薬の飲用に制限なく使用できます。健康用途ではミネラルが豊富な水を、災害時では軟水(または純水)が求められています。
※塩の自由化・・・1997年(平成9年)の塩事業法施行により、塩専売制度は廃止、原則自由の市場構造に転換した。 新制度では塩事業者間の競争が促進される中で、多様な消費者ニーズに適切に対応しながら、創意工夫による商品の開発など、一層の営業努力が発揮されることにより、塩の安定供給を担う塩産業が健全に発展することが求められた。
業界の先駆けとなった「熱中対策水」


ーー特に夏の時期には、「熱中対策水」が好評ですね



2008年からミネラルを含んで、美味しく水分・塩分補給ができるドリンクとして「熱中対策水」の販売を開始しました。
それまで熱い時ではスポーツドリンクやお茶などで水分補給をされていましたが、特に塩分を補給できるドリンクとして当時では珍しかったのです。
その後、熱中対策向けのゼリー、塩タブレット、塩アメなどを販売しましたが、市場への投入は早かったです。
食のワークショップとカフェの併設店舗を開設


ーー最近の赤穂化成さまの取り組みではどのようなことがありますか。



2022年3月に、食のワークショップと当社の塩を使った軽食・スイーツを提供するカフェ「AMAMI TERRACE(アマミテラス)」を兵庫県赤穂市の伊和都比売(いわつひめ)神社境内にオープンしました。瀬戸内海を眺めながら、ランチやカフェが楽しめる場所です。すぐそばには赤穂温泉があります。
赤穂の塩の美味しさを伝え、その場で平釜により塩を炊いており、そのようすをご覧になることもできますし、当社ではさまざまな塩を制作していますので、味比べもでき、お土産もご購入いただけます。


ワークショップでは、味噌や塩、梅干作りなどを季節に応じて開催し、作り手の想いやストーリーを伝える場です。ワークショップの告知はInstagram(@amami_terrace)で行っています。
天日塩で無添加塩に挑戦



続いて新たな塩づくりの観点では、天日塩づくりをしています。
赤穂の塩と海洋深層水の塩の評価が高く、料理ごとに合う塩を求めるユーザーがいらっしゃると考え、オリジナルのマイソルトを作る発想に至り、塩に価値を求めるユーザーのニーズに合わせた塩づくりを行う目的で「天のハウス」を設備化しました。
天のハウスでは、結晶工程を天日で行うことで無添加塩、環境に配慮した塩を作ることができます。


最後になりますが、赤穂の塩はにがりが入っていて、とても美味しいことが伝わっていただければ嬉しいです。
会社概要
社名 | 赤穂化成株式会社 |
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本社 | 〒678-0193 兵庫県赤穂市坂越329番地 |
連絡先 | TEL:0791-48-1111(代) FAX:0791-48-1735 |
代表取締役社長 | 池上良成 |
公式HP | https://web.ako-kasei.co.jp/ |
公式X | https://x.com/ako_kasei |
公式Instagram | https://www.instagram.com/ako_kasei/ |
公式YouTube | https://www.youtube.com/channel/UCGG7RDJ_67RmAhagNu7pW3Q |
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