秋田県南東部の横手盆地に位置し、雄大な奥羽山脈の麓に広がる美郷町は、東北最大級のラベンダー畑を持ち、その中でも特に珍しい白いラベンダーが見られることで知られています。
次の注目点は、町内に114ヶ所もの湧水が確認され、「名水百選」に選ばれた、麗しい湧き水である「六郷湧水群」は、人々の暮らしを潤し、豊かな旅の魅力を生み出しました。
さらに国の重要無形民俗文化財にも指定され、2月中旬に開催する、小正月行事「六郷のカマクラ」など地域の民俗文化を大切に守っています。
今回はあきた美郷づくり株式会社の佐々木 愛さんに、美郷町の魅力についてうかがいました。
あきた美郷づくり株式会社
観光企画部 美郷町観光情報センター 主任
佐々木 愛さん
東北最大級のラベンダー園で注目される秋田県・美郷町
ーー秋田県の美郷町はどんなところか教えていただけますでしょうか。
美郷町は、秋田県南東部の横手盆地に位置しています。奥羽山脈の裾野に広がり、多くの高山植物が見られ、標高は1,059mの真昼岳(まひるだけ)や環境庁(現・環境省)から名水百選に選ばれた湧き水、東北最大級の「美郷町ラベンダー園」などがある、雄大な大自然に恵まれた町です。
その中でも私たち、あきた美郷づくり株式会社は、観光や地域振興など、美郷町の観光業務に携わっており、場合によっては町のイベントを主催することもあります。
ラベンダーが咲き誇る時期は6月
ーー美郷雪華が咲き誇る美郷町ラベンダー園は必見ですね
美郷町ラベンダー園は、美郷町大台野広場内の約2haの広大な畑です。早咲き遅咲きとさまざまな種類のラベンダー全7品種栽培されています。濃い紫、薄い紫と紫のラベンダーと多種多様で、2万株ものラベンダーが風で揺らめく景色は、美郷町の初夏の風物詩です。香りも品種により異なります。
この美郷町ラベンダー園の中でも、美郷町オリジナル品種のホワイトラベンダー「美郷雪華」(みさとせっか)が有名です。ラベンダーは、一般的に紫色をご想像されますが、美郷町のラベンダー畑には紫色のほか、めずらしい白色のラベンダーがあるんです。
北海道よりも早くラベンダーを鑑賞できます。ちなみに2024年のラベンダーまつりは、6月8日〜6月30日まで開催しました。例年6月の上旬頃から行います。まつりの最中には出店や摘み取り、香りを比べながら散策することができます。摘み取ったラベンダーを持ち帰って、ドライフラワーにするのがオススメです。
ホワイトラベンダー誕生の秘話
ーーそれにしても白色のラベンダーの美郷雪華は不思議な花ですね。どのように誕生したのでしょうか。
2005年(平成17年) 6 月のことです。ラベンダー園内の「さきがけ」という品種の一部に白っぽい花が見つかりました。
この白っぽい花に「挿し穂」という手法を用いて株の増殖を試みたところ、白色のラベンダーが花を咲かせ、約2 年にわたる調査で品種として安定したことが確認できたのです。
2010年(平成22年)3月には公募の結果、この白色ラベンダーの名称を美郷雪華に決定し、同年4 月に、農林水産省に品種登録を申請。2013年(平成25年)の2月12日に新種登録が完了し、美郷町でのラベンダーのオリジナル品種が誕生しました。
“美郷の初夏に美しい雪の結晶(雪華)が見られるように”との思いから名付けられた「美郷雪華」。毎年可憐な花を咲かせ、美郷町ラベンダー園を訪れる人々の目を楽しませてくれます。
ラベンダー園に美郷雪華の存在を知らずにいらっしゃる方もおります。そこでホワイトラベンダーをはじめて見て感動される方も多いです。私どもお客さまから、「なぜホワイトラベンダーがあるんですか」と質問されますので、今申し上げた美郷雪華の誕生秘話を解説しています。また、後に申し上げますが関連商品も続々と誕生していますので、販売も好調です。
ラベンダーまつり期間中にぜひご来場いただき、紫色と白色のコントラストをお楽しみください。
湧き水が豊富な美郷町は名水百選にも選ばれた
ーー美郷町は湧き水が豊富で、「六郷湧水群」が名水百選に選ばれましたね
美郷町内には114ヶ所の湧水が確認され、今も日々の暮らし・生活に密着した清水※として親しまれています。町内の六郷地区は、古来より百清水ともいわれてきました。
「六郷湧水群」とはこの六郷地区に点在する60ヶ所以上の湧水の総称で「名水百選」にも選定され、年間を通して水温13度前後の水が湧き、清水の郷として知られ、まろやかで美味しい軟水です。
奥羽山脈に降った雨や雪が地下を浸透し、長い時間をかけてろ過し、湧き出ています。
「水源の森」として知られる七滝山は、美郷町東方部、奥羽山系の標高776.3mの山です。
「水源の森百選」「守りたい秋田の里地里山50」に認定された「七滝山」は、名水百選に選ばれた六郷湧水群の水源として貴重な存在となっています。スギのほか、ブナ、ミズナラ、トチ、ケヤキなどの広葉樹が広がり森林浴を楽しめるほか、仙北平野が一望できる眺望スポットもあります。
アウトドア・フィールドとしては、各コースに広大なブナ林が広がり、トレッキングだけでなくトレイルランニングや七滝川を利用した沢登り等、多種多様な楽しみ方ができます。
六郷湧水群の中でも、「御台所清水(おだいどころしみず)」が名高いです。秋田藩※2代目藩主の佐竹義隆(さたけよしたか)公が鷹狩の際に、炊事やお茶の水に使用。歴史ある清水です。形が瓢箪に似ていることから「ふくべ清水」とも呼ばれています。
御台所清水を囲む形でお花が植えられ、 季節ごとに桜、つつじやアジサイなどが咲き、訪れる方々の心を水とお花で癒しています。
- 清水
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岩の間などから涌き出る澄んだ湧水のこと。
- 秋田藩
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久保田藩ともいわれる。久保田城を居城とし、藩主は佐竹氏が治めた。表高は約20万石、実高は約40万石。
- 佐竹義隆公
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新田開発など藩内の産業発展にも尽くし、秋田音頭を普及させ産業・文化両面で秋田県を発展させた名君と伝えられる。
生活に密着した清水であり、近隣の方々が地域の夏野菜や果物(スイカやトマト、キュウリ)を洗い、冷されてご活用されるなど大変愛されていることがうかがえます。
菅江真澄の※『月の出羽路』の中で、「藤清水は見るべき処也」とあり、その美しさに心をうばわれたと知られている藤清水。現在は初夏に紫陽花が水面に映し出され、また違った美しさを楽しめます。藤清水の近くには、藤棚があり、5月頃に藤が咲き誇ります。
※菅江真澄・・・秋田県と深いかかわりがあり、東北、北海道などを旅しながら各地の生活文化を旅日記等に書き記した紀行家で、柳田國男により「日本民俗学の開祖」と讃えられた人物。秋田県立博物館は真澄研究の拠点として、1996年(平成8年)に「菅江真澄資料センター」を創設した。
ーー国の重要無形民俗文化財の「六郷のカマクラ」は民俗学的にも貴重な行事ですね
「六郷のカマクラ」は2月中旬の5日間の行事で、初日の蔵開き・天筆書初めから、最終日の竹うち・天筆焼きまでの一連の催しです。
年中行事の中に「小正月」があり、旧暦の1月15日でその年の最初の満月の日に当たります。小正月の行事は地域によってさまざまですが、正月飾りを焚いたりする「どんと焼き」などの行事が多いようです。「六郷のカマクラ」は700年余り続く小正月行事で、本来の伝統の姿を維持し、住民の伝承意欲も高いと評価され、1982年(昭和57年)には国の重要無形民俗文化財に指定されました。
豊作、安全繁栄を祈る「年ごい」、凶作や不幸を除去する「悪魔払い」、そしてその年の吉凶を占う「年占い」の3つが一体となった行事です。
クライマックスであり最終日に行われる「竹うち」は、旧羽州街道を境に南軍、北軍の二手に分かれて、お互いが長さ7~8mの青竹を打ち、押し合いながら、勝敗を決めます。北軍が勝てば豊作、南軍が勝てば米の値段があがると伝わっています。
毎年2月11日から2月15日までの5日間にわたって行われていました。ただし「竹うち」は打ち手の確保・多くの人に来てもらいやすいようにと土曜日に設定し、2024年は2月13日(火)~2月17日(土)に開催しました。
今回は、雪不足のため「竹うち」は中止となりましたが来年こそは行いたいです。700年の伝統ある行事なため、ぜひ幻想的な光景を体験していただきたいです。
豊富な湯量で自然に囲まれた温泉が魅力
ーー美郷町の温泉のご紹介をお願いします。
美郷町には、「千畑温泉サン・アール」「六郷温泉あったか山」「湯とぴあ雁の里温泉」の3つの温泉施設があります。
「千畑温泉サン・アール」は、自然に囲まれたくつろぎの湯で、露天風呂やサウナがあり人気の温泉です。客室も14室あり、ご宿泊やご休憩でゆっくりくつろいでいただけます。
旬の地元食材を使った自慢の料理も人気です。また、屋内温水プールや屋外テニスコートなども併設しています。
2番目の「六郷温泉あったか山」は、強アルカリ性で、カルシウム含有量は全国屈指の天然温泉。大浴場と露天風呂のほか大広間やリラクゼーションルームも館内にあります。
敷地内には全10棟のコテージがあり、ご宿泊いただけます。ペット同伴でご宿泊できるプライベートドッグラン付きコテージもございます。なお一昨年に、テントサウナを屋外に作りました。
予約制ですのでテントサウナの利用をご希望される場合は、ご予約が必要です。
「湯とぴあ雁の里温泉」は大浴場のほか、うたせ湯、寝湯、歩行浴、サウナなどさまざまな温泉を楽しめ、メニュー豊富なお食事処、大広間や個室でゆっくりくつろいでいただけます。
美郷町の酒蔵は、「栗林酒造店」と「高橋酒造店」
ーー水が豊富な場所は酒どころともうかがっていますが、美郷町では
美郷町のご当地サイダーが世界へ向けて販売
私どもあきた美郷づくりでは、六郷湧水群のひとつ「ニテコ清水」の地下水を使用し、秋田県を代表する地サイダー「ニテコサイダー」を製造しております。
水にこだわり、本来のうまさを引き出すため、柔らかな甘さと、まろやかな炭酸に仕上げています。喉ごしがスッキリと爽やかで、口の中に優しく広がる甘さは、創業以来守り継がれた伝統のサイダーの味です。水が美味しいところで造った酒やサイダーは、クセがなく、本来の旨味を醸し出します。
いろいろと限定商品も販売しています。たとえばラベンダーまつり限定で今年も「ニテコラベンダーサイダー」を限定販売しました。
当社はご当地サイダー・地サイダーのOEM製造を小ロットから承っております。全国各地のローカルなオリジナルサイダーの製造にも対応し、ご自身の地域の特産品としてオリジナルサイダーを作りたい方や、独自のブランドを展開したい方は、お気軽に当社までご相談ください。企業だけではなく、町・地域のPRにも最適です。
美郷雪華の関連商品でルームフレグランスを発売
ーーーホワイトラベンダー「美郷雪華」での関連商品はありますか。
あきた美郷づくりは、美郷町オリジナル品種のホワイトラベンダーを使用した「美郷雪華ルームフレグランス」の製造・販売をしています。
美郷雪華から真空低温抽出法※で抽出したフローラルウォーターを主原料としたルームフレグランスです。
一吹きするだけで、お部屋が優しい美郷雪華の香りに包まれ、ラベンダーの自然の香りにより癒しの空間をお楽しみいただければと思います。
ホワイトラベンダーの香りを気に入られた方の中には、「来年はラベンダー園に是非行ってみたい」と思われる方も多いのです。
※低温真空低温抽出法・・・植物資源や食物資源を液体と固体にまるごと分離させる製法。水や溶剤を使わず、低温(35℃~40℃)で植物や食物の有効成分を抽出する効率の高い抽出法植物資源や食物資源を液体と固体にまるごと分離させる製法。(出典: https://unshelve.jp/)
インバウンドの集客にも注力
ーーーこれからあきた美郷づくりはどのような活動をされていきますか。
インバウンドの集客にも力を入れ、現在モニターツアーを実施しています。2015年にタイ・ナショナルジュニアバドミントンチームが美郷町で合宿したことを契機に相互交流を深め、東京オリンピック2020の開催に際し、タイのホストタウンに登録されています。それ以降、美郷町とタイは交流をより深め、タイ人向けの観光コンテンツをこれから作ってまいります。
モニターツアーでは、タイ人もインスタ映えをする場所を求められている方が多いと感じました。特にラベンダー園をもっと推し出していきたいです。
今後は旅行会社にツアーを組んでもらえるように、水とラベンダーの魅力を伝えていきたいです。
会社概要
会社名 | あきた美郷づくり株式会社 |
所在地 | 秋田県仙北郡美郷町六郷字馬町83番地 |
電話番号 | 0187-84-0020 |
代表者名 | 小林 宏和 |
公式美郷町観光情報センターHP | https://kanko.akita-misato.com/ |
公式あきた美郷づくり株式会社Instagram | https://www.instagram.com/akita_misato.amd/ |
公式美郷町観光情報センターInstagram | https://www.instagram.com/kankoumisato/ |
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