長野県の木島平村(きじまだいらむら)の一帯は「信越自然郷エリア」※と呼ばれ、見渡す限りの山々と里の風景が広がり、自然を身体で感じられる地域です。人口は約4000人で小さな村です。
※信越自然郷エリア・・・長野県と新潟県にまたがる信越9市町村(飯山市・中野市・妙高市・山ノ内町・信濃町・飯綱町・木島平村・野沢温泉村・栄村)は、9市町村全域を「自然共生圏」と捉え「信越自然郷(しんえつしぜんきょう)」と命名した。
また、木島平村のコシヒカリを選りすぐった米に「村長の太鼓判」があり、美味しい米を求める方から好評で、「ふるさと納税」では減農薬・無化学肥料で好評を博しています。
今回は、一般社団法人木島平村観光振興局の長野安那さんに木島平村の魅力などについて話をうかがいました。
一般社団法人木島平村観光振興局
長野 安那さん
自然と人が共存してきた農山村
――まず、木島平村のご紹介からお願いします。
木島平村は、長野県の北部に位置する豪雪地帯。村の約81%を森林が占め、里にはのどかな故郷を思わせる田園風景が広がり、昔から自然と人が共存してきた農山村です。少し標高を上げると一面の田んぼが望め、水田、田植え後の鮮やかな緑色、黄金色の稲穂と・・・四季折々で“村の色”が変化するのも魅力。
高社山やカヤの高原をはじめとするフィールドでは、キャンプ、登山、トレイルランニング、ウィンタースポーツなど、さまざまなレジャーやスポーツが楽しめます。また、この一帯は「信越自然郷エリア」と呼ばれ、アウトドアアクティビティやスノーリゾート、温泉地が充実しており四季を通じて訪れる人が絶えません。JR東日本北陸新幹線と飯山線の飯山駅から車を走らせ約15分の位置にあり、アクセスも良好です。
――魅力はどのような点にありますか。
ブナの原生林にゆったりと浸れる
第二は、高社山(こうしゃさん)。ゴールデンウイークを目前にひかえた頃には、木島平村周辺の山々の雪が解け、新緑の季節がはじまり、登山のシーズンがスタートします。紅葉の時期まで楽しんでいただけるスポットです。
標高1351.5mで奥信濃を代表する山のひとつで木島平村と隣接する自治体の中野市、山ノ内町の境界にそびえ立ち、地元の方からは「たかやしろ」と呼ばれたり、長い裾野を引くその形から「高井富士」とも呼ばれ愛されています。
登山ルートは複数あり、代表的なルートは3本。木島平村、中野市、山ノ内町のそれぞれから登ることができ、初心者にも比較的登りやすい点でも知られています。冬は雪に覆われスキーなどのウィンタースポーツで賑わい、一年を通して美しい姿とアクティビティが楽しめるのが特徴的です。
――こうした自然を体感できるには、山登りやブナの森の散策だけではないのでしょうね。
繰り返しになりますが、木島平村の最大の魅力は、美しい田園風景とそこに映し出される山村の風景を体感できることです。信州ならではの深い山々と日本最長を誇る千曲川の大自然と、田舎の里が織りなす素朴な風景は他では体感できません。
冬は感動の銀世界が広がる高社山麓のスキー場
――話は変わりますが、豪雪地帯ですからスキーも盛んと思いますが。
木島平村には高社山麓に広がる、ファミリーで楽しめる「Theきじまスノーパーク」と、「木島平スキー場」から名前を変えおしゃれにリニューアルした「スノーリゾート ロマンスの神様」とふたつのスキー場があります。どちらもパウダースノーが満喫でき、「スノーリゾート ロマンスの神様」は日本最大級の800mのそりコースから上級者コースまで幅広い層に楽しんでいただけます。
雄⼤な⾃然の地形をそのまま活かした⼭頂の魅⼒はなんといっても⽇本⼀を誇る最⼤斜度46度を滑り落ちるような急斜⾯。ほぼ垂直に落ちる圧雪されていない雪の上を滑るハラハラドキドキなコースを楽しめるんですよ。
タイミングがあえば、雲海※を見ながらスキーも楽しめます。
※雲海・・・雲の海に山々が島のように浮かんでいるように見えることから雲海と呼ばれる気象景観。
自然を感じ、風を切るサイクリングは最高
――サイクリングでの楽しみ方を教えてください。
たとえば、農村地域である木島平村には細かい用水路が入り組み、自動車では通りにくかったり、普段は通ることのない細かい農道がたくさん走っています。カエルの大合唱やせせらぎの音を聞きながら集落や田んぼの中を駆け抜けたりと、サイクリングならではの五感で感じながら楽しむことができます。
また、樽川上流の部谷沢地区では棚田の景色も見ることができます。棚田からは村が一望でき、更に飯山盆地から斑尾高原、その奥には妙高山から新潟県境に聳える関田山脈まで望め、信越自然郷の魅力が詰まった景色が広がります。コースは1時間ほどで周遊できるものからあり、気軽に楽しんでいただけます。また、木島平村観光振興局ではE-BIKE(電動アシスト付き自転車)のレンタルもあるので体力に自信がなくでも、坂の多い農村地域をスイスイと駆け抜けることができますよ!
田園風景を楽しむなら、5月頃から稲穂の収穫が始まる9月頃までがおすすめです。
雪景色の眺望が東日本一「馬曲温泉」
――信州は温泉が豊富な地域ですが、こちらではいかがですか。
「馬曲温泉(まぐせおんせん)」をご紹介します。馬曲川上流の山間に位置する人気の秘湯。晴れた日は露天風呂から木島平村のシンボルである高社山から遠く北アルプスまで見渡せます。日本経済新聞が選定した『雪景色が素晴らしい温泉』では、東日本で一番と評価されましたが、秋の紅葉など通年で素晴らしい眺望を見ながらの温泉で、ヒノキが香る内風呂も人気なんです。2024年4月にリニューアルオープンし、パウダールームが充実し、タオル付なので手ぶらでも楽しめます。
全国的に評価の高い木島平村のコシヒカリ
――木島平村のグルメはどのようなものがありますか。
あまり知られていませんが、木島平村は全国有数の米どころです。特に木島平村産のコシヒカリが高い評価を得ています。米のオリンピックと呼ばれる「米・食味分析鑑定コンクール(国際大会)」で10年連続金賞に輝いた米の優良産地。木島平村産コシヒカリの中でもより高品質な米だけを厳選したものが「村長の太鼓判」です。もちもちとした食感と深い甘みが特徴です。ご安心して召し上がっていただくために長野県の栽培基準より農薬を50%以上削減し、化学肥料を使わず栽培しております。
――木島平村のコシヒカリはなぜそんなに美味しいのでしょうか。
ブナの原生林が広がっていることはご説明しましたが、そこで蓄えられた雪解け水が里に流れ込んでいる点が大きいです。美味しい米を育くむためには良質な水が必要です。
次にコシヒカリの栽培に最適な標高300~500mに多くの水田が形成されていることも大きいです。山々に囲まれ、昼夜の温度差が大きいことも米の甘みを高めます。最後に米作りの情熱です。農家の方々はあくなき米づくりに誇りを持たれています。
風味豊かでのど越しがよく、噛み応えのある手打ちそば
――ところで信州といえばそばが有名ですが
はいそうですね。この木島平村でもそばは名物です。地元産そば粉と平成の名水百選「龍興寺清水」※、つなぎに雄山火口(オヤマボクチ/ヤマゴボウ)※を使用した手打ちそば「名水火口(ぼくち)そば」。何といっても、風味豊かでのど越しがよく、コシが強いです。
※龍興寺清水・・・木島平村内山地区の公民館の横に湧き出る清水で、かつてこの地にあったお寺の名から、龍興寺清水と呼ばれ周囲の住民達により大切に守られてきた。
※雄山火口・・・キク科ヤマボクチ属の多年草。
ちなみに木島平村で「名水火口そば」を提供されている蕎麦屋さんは、「手打ちそば 樽滝」「そば処「村」(道の駅ファームス木島平内)」と2軒でお召し上がれます。それぞれの店舗で特徴がありますので、各店舗の食べ比べをしてみてはいかがでしょうか。
――木島平村ならではの酒米もあるそうで、さまざまな酒蔵でもご利用されているとか
木島平村内には酒蔵はありませんが、自慢の酒米「金紋錦(きんもんにしき)」は長野県内外の酒蔵で使用されています。金紋錦は、栽培の難しさによって生産量が減り、一時は木島平村のみで栽培されていました。
――「金紋錦」を使用した日本酒はどのようなものがありますか。
脈々と地域に受け継がれる伝統のお祭り「柱松子」
――地域によっては、少子高齢化で祭りなどのイベントが衰退していますが、ここ木島平村では今なお、盛んとうかがいました。
信州は、修験道※の信仰が盛んな地域で、それが里にも定着したようです。その一つに、年の農作物の吉凶を占う火祭り行事「柱松子(はしらまつこ)」は夏に行われています。修験者が行った「験競べ」(げんくらべ)※が由来とされています。
※修験道・・・山岳崇拝を基とし、厳しい山々で修行し、困苦を忍び、心身を修練する日本独自の宗教。修験が里に根付くことにより、さまざまな民間行事や民間信仰が生まれた。ちなみに、信州は、山が多いため、修験道が盛んな地域であった。
※験競べ・・・修験者どうしが相手を決めて互いに法術を尽くし,身についた験力の優劣を競うもの。これをルーツとし、日本全国でさまざまな民間行事が行われている。
2本の柱松をたて、松神子(まつみこ)と呼ばれる子どもが、それぞれの柱松にのぼり火打石で火をつけ、早く燃えだした方が勝ちで、上が勝つと天下泰平、下が勝つと五穀豊穣と伝えられています。
木島平村では内山地区と南鴨地区でそれぞれ行われ、この「内山柱松子」と「南鴨柱松子」、隣接する飯山市の瑞穂の小菅神社「柱松柴燈神事」の3つを合わせ「北信濃の柱松行事」として国の選択文化財指定を受けています。
内山柱松子は別名「炎の奇祭」。お堂の前で炊き上げた火の回りを、「お天王さま」と呼ばれる神輿を担ぎ走り回ります。南鴨柱松子は過去に一度途絶えましたが、地域の方々の熱意から復活し、こちらは子どもだけで行われるのが特徴です。
木島平村は、27の地区がありそれぞれの地区で秋祭り(宵宮)を秋の収穫や実りに対して感謝の意味を込めて行われます。また、年始には一年の無病息災を願う火祭り「道祖神祭り」が各地区で行われたりもしますが、小さな村でこれだけのお祭り定期的に開催されていることは、地域の皆さんの努力と地域への愛の賜物だと思っています。
このように木島平村は、里山と自然が共存してきた農村です。里山を巡り、グルメも楽しめ、今ではなかなか体験できないような民間行事が続いている地域です。春から秋にかけてはサイクリング、冬はスキーと楽しみ方は豊富な場所です。こちらを見て関心を持たれた方は是非、一度、訪れてください。
施設概要
名称 | 一般社団法人 木島平村観光振興局 |
住所 | 〒389-2303 長野県下高井郡木島平村大字上木島38₋1 |
TEL | 0269-82-2800 (道の駅ファームス木島平内) |
公式HP | https://kijimadaira.org/ |
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