「日本に正しい投資の考え方を根づかせたい」という理念から設立された一般社団法人投資診断協会。主な業務内容として、正しい投資や投資商品についてアドバイスするプロとしての資格「投資診断士®」の発行・運用などを行い、現在、約5,000名を付与し、生命保険会社の取得推奨資格となり、大手デベロッパー社員も積極的に取得している。
最近、新NISAの動向などを受け、日本人全体が投資に対して深い関心を寄せている中、「投資診断士®」や金融リテラシーの必要性について、投資診断協会の髙松伸吾代表理事に話をうかがいました。
一般社団法人投資診断協会
代表理事 髙松伸吾氏
正しい投資や商品をアドバイスする存在に
――一般社団法人投資診断協会さまを設立した理由を教えてください。
投資は将来の資産形成をしていくうえでは有用なツールであることは間違いないのですが、日本全体が金融リテラシー教育に力を入れてこなかった点に課題があります。投資に対して正しい理解がやや欠けている点があり、投資と投機をひとくくりにする方も多く、結果的に投資が危ないと思い込む方も一定数おります。そこで日本では資産形成があまり根付いてこなかったのです。
お金やお金の流れに関する知識や判断力を身につく金融リテラシーはこれから非常に重要になっていきます。私たちは日々生活の中で「物やサービスを買う」「給与や代金を受け取る」「お金を貯める」「お金を借りる」と様々な形でお金に関わって暮らしています。だからこそ、私たちが社会の中で経済的に自立し、しっかりと生きていくために欠かせない金融リテラシーを身につける必要があるのです。
「日本に正しい投資の考え方を根付かせること」という想いがあり、投資診断協会を創設しました。公益性を高め、社会貢献につなげていきたかったので、一般社団法人という形をとりました。
国も「貯蓄から投資へ」と謳い、資産形成をしなければ老後資金が不足すると言われていますが、現実には、何に投資したらよいか分からないという人が多いと思います。自分のリスク以上の投資をしてしまうケースや、ちゃんと調査せずに怪しい投資商品を購入して騙される人もたくさんいらっしゃいます。
そうしたことが起こるのは、日本では金融教育が体系化されておらず、金融リテラシーが向上していないためです。大切な資産を投資するからこそ、「資産を守るための投資」、そして「リスクコントロール」という概念が重要になります。そこで、正しい投資や投資商品についてアドバイスする存在をつくりたいと思ったのがきっかけです。
――日本人は外国人と比べ預貯金が多いといわれていますね。
実は銀行預金も利率がついているので投資の一種です。現金のみで生活している人以外は投資をされているのです。投資自体には触れていますが、ただし正しく資産を増やすような資産形成に取組んでいる方が少ないのが現状といえます。
リスク許容度の範囲内での投資が肝要
――よく投資記事の中に退職金をすべてFXに投入して溶かしたという記事がありますが。
FXも正しい手法で行えば投機ではなく投資になりますが、リスクが高ければリターンも高いですが、リスク許容度よりも高い投資を行うことに問題があります。一撃でFXにより大きな収益を上げようとすれば、それだけのリスクがあるのです。
これは個別株についても同じです。日本人は退職金を特定の個別株に投入し、大損する記事が好きですが、個別株に投資すること自体は悪いことではありません。FXと同様、リスク許容度の範囲内で投資すれば問題はありません。個別株に投資することは、今の経済状況に合致し、さらに業績の詳細調査が肝要です。
企業の内実を調査もせずに銀行や証券会社のスタッフのアドバイスを受けて、下がってしまうというのはあくまで結果論です。その結果のリスクも踏まえて投資していかなければなりません。
業務は「投資診断士®」などの3本柱で構成
――次に貴協会の業務内容については。
「投資診断士®」の資格の発行と運用が1つ目の柱。次に金融経済教育で、法人の社員教育、中学、高校、大学と若年層に対する金融経済教育の研修が2つ目の柱。さらには、投資傾向を脳科学の分野から計っていく「投資診断ブレイン」が3つ目の柱です。
――それでは1つずつうかがいます。まず、「投資診断士®」の資格から教えてください。
正しい投資商品を根付かせるところからスタートしています。一般的な投資では、暗号資産、株式、債券、投信、生命保険、不動産、海外、クラウドファンディング、太陽光、絵画、船、FXなどがあります。それぞれ学ぼうとすると、大変です。
投資される方は、それぞれの商品がどのような特性や特徴があり、先ほどから申し上げている通り、リスクリターンの関係値や税金の取り扱いを知りたいのです。日本で法令上、認められている投資商品を一元化で学べる資格を創設しました。
――ファイナンシャル・プランナー(FP)との違いはどこにありますでしょうか。
日本におけるFPは人生設計に寄り添っているところが多い。暮らしとお金に関する知識やライフプランに基づく、将来の収支見通しを立て、最適な資産運用を提案されます。ライフイベントでは、住宅購入の資金の調達方法や老後資金の確保についてのお話が多いのです。
一方、「投資診断士®」は投資そのものに踏み込み、投資商品の具体的な内容や投資する上で必要な知識を研修している資格です。
研修項目は下記の通りです。
- 金融リテラシー
- 投資に関する基礎知識
- 投資商品について(株式投資、債券、投資信託、不動産投資、生命保険、現物投資、暗号資産など)
- 制度投資について(確定拠出年金・NISAなど)
- 投資商品の選び方
- 投資法品に関わる主な法律
- 投資診断士®とは
――今、何名ほど「投資診断士®」の資格を取得されたのでしょうか。
資格取得講習会は2019年2月から開始し、現在、5,000名を突破しました。最近では、大手生命保険株式会社さまで社員のお名刺に資格を掲載できる推奨資格となっています。金融、保険、証券会社、デベロッパーの社員は、ご自身の発言の信用度を増すためにこの資格を取得される方が多いです。他社の商品に精通しつつ、自社の商品の良さを正しくお客さまに伝えたいという想いがある点に資格取得の背景があると思います。
授業や社員研修を行う「マネティ」を展開
――学校や法人への金融教育ですがこちらはいかがですか。
投資診断協会は、日本に正しい投資の考え方を根付かせる先生として『マネーティーチャー(お金の先生)』を学校や企業に派遣し、授業や社員研修を行う「マネティ」を展開中です。これは、「学校・PTAへの消費者教育」「企業への社員研修勉強会」など、これからの時代に必要な金融リテラシーを向上させるものです。
2022年4月から高校で踏み込んだテーマである「資産形成」について授業で必修になりました。従来は家庭科で「無駄づかいしない」「だまされない」など消費者目線に偏っていましたが、今後は資産形成のために、金融サービスを利用する投資家目線の内容を教える必要に迫られました。
一般的には教育委員会から送られてきたテキストをもとに学校の先生が教えるのですが、金融教育の専門家ではなく、中には投資されている先生もいらっしゃるかもしれませんが、やはり資産形成や金融リテラシーを正確に理解されている方が教えることが望ましい。今は毎月、学校から依頼があり、実績としては80校以上あります。
学校側としても投資の専門家ではありませんから、どこか正式に機関に依頼されたいニーズが高く、そこで投資診断協会にご連絡いただいています。
――学校や法人への資産形成の教育については、「投資診断士®」を取得された方が登壇されるのでしょうか。
はい、「投資診断士®」や金融経済教育ができる「マネティ」の資格取得者が担当します。学校側からの依頼が来ると、その地域の資格取得者と日時を調整し、その学校にボランティアの先生を派遣いたします。
投資診断協会が付与する資格を取得し、金融リテラシーを伝えられることができるようになった方が生徒や学校の先生に対して金融庁が求めている資産形成に対して正しく伝えられていることについては喜ばれていると思います。学校側からのリピーターも大変多いです。
学校や法人の金融教育で登壇されている方も自身の知識を正しく世の中に披露できるので、その場があることで喜んでいただいています。場合によって地元紙に取り上げていただくケースもあり、自身の価値向上につながっています。
――教育についてはどちらにポイントを置かれていますか
教える内容は具体的な投資商品よりも日本史を含めてお金の考え方にシフトしています。まず、金融リテラシーから始まり、家計管理、生活設計、金融基礎知識、外部知見の活用を教えています。特に日本人全般が不足しているのが生活設計で具体的には教育、住宅、老後の各資金でこれからかかる費用についての知識が不足しています。その時になってはじめて愕然とします。
最も重要なのが金融基礎知識で、金融に対する金利や物価の考え方です。恐らくこれから人間の長寿命化はさらに進展します。今、定年は再雇用も含めて65歳で、企業によっては70歳まで雇用を確保するところもあります。仮に70歳で会社を退社すると今度は70~100歳まで生活できる術を持っていかなければなりません。そこで必要なことは若いうちから資産形成をし、老後資金を正しく確保することが重要との考え方を伝えています。
――最近の時事を踏まえて新たなテーマも増えたとのことですが。
特殊詐欺についても教えています。今は、SNSも含めて情報が取れますので、その中から正しい情報を取捨選択できるIT情報リテラシーも伝えています。授業では月利3%では正しい投資商品はほぼないと伝えています。これが年利でいえば36%になり、元本確保型とうたっていれば、ポンジスキーム型※の詐欺手法と疑ったくださいと教えます。
美味しい話は世の中には広まるわけがないことを正しく知って欲しいので伝統的な詐欺手法についても教えています。ポンジスキーム型の詐欺では10万円を投資すると3万円帰ってきて、さらに追加投資してまた多くの金額が返ってくると、一部の方が本物の投資商品と疑わず次々と投資するのですが、ポンジスキームは実際には運用しませんから、最後は破綻します。
※ポンジスキーム・・・投資詐欺の一種。出資した資金を運用し、その利益を出資者に配当金で還元すると称するが、実際には資金運用を行わず、後から参加する出資者から新たに集めたお金の大半を、以前からの出資者に向けて配当金と偽って渡す。一見、資金運用での利益を出資者に配当しているかのように装うものの、最後は破綻する。
投資タイプは15に分類でき、投資傾向も分かる
――そして3本目の柱の「投資診断ブレイン」はどのようなものですか。
「投資診断ブレイン」は、東京大学大学院総合文化研究科の酒井 邦嘉教授、明治大学理工学部電気電子生命学科の嶋田 総太郎教授など多くの学識経験者が監修されている一般社団法人ブレインアナリスト協会と共同で開発。もともとブレインテストに基づいて、脳傾向からいろんな傾向があることが分かってきました。そこで私は投資も脳傾向に左右されるのではと考えました。
被験者数百名を揃え、1年かけて調査を実施。その母数から見て脳傾向と投資の傾向性の関連があるということが分かったのです。それを形にしたのが「投資診断ブレイン」です。シンプルにその方の投資傾向が分かります。
人によって投資タイプは15タイプに分類でき、どのような傾向に満足しやすいか、重要視するかも分かります。たとえば「自分流投資タイプ」がありますが、これは人のいうことを聞かない方が多いですね。また、「ひらめき投資タイプ」は思い立ったらやってみるタイプです。たとえば私であれば、「頭脳オールラウンダー投資タイプ」でした。これは収益性、インフレ対応に特に重視します。
そこで投資する前に自分がどのような投資傾向を持ち、どのような投資商品に満足するかを理解してから、投資のアドバイスを受けた方がしっくりするはずです。中には詐欺に遭いやすさも分かります。実は意外なことに「リスク最小限慎重投資タイプ」「努力家投資タイプ」は騙されやすい。ある投資家教育を30年間続けてきた機関が教育ツールとして採用されました。
大学でテストしたところ、15人いれば15通りの結果が出て、そこで投資をもっと具体的に考えたいので、アドバイスをお願いしますなどと投資について一歩踏み出し、前向きになりました。学校の金融経済教育や法人の社員研修にも使えるツールです。
人生100年時代 国任せ、人任せではいけない時代
――新NISAについてはどうお考えですか。
先ほど人間の長寿命化の話をしましたがこれだけ社会構造が変化していますから、すべて国任せ、人任せではいけない時代です。そこに気が付かなくてはいけません。ご自身の健康寿命にも限界があり、働き続ける時間も同じく限りがあるでしょう。であるならば資産形成をしておかなければなりませんし、それは世界的な潮流で、日本が遅れているだけなのです。
その遅れを取り戻し、投資への一歩を踏み出すために、NISAを拡充した新NISAやiDeCoなどの制度を設け、投資しやすい環境を整えていると受け止めています。
実は1億円をつくるのは難しくありません。最初に10万円入れて、次から毎月2万円ずつ40年間投資続け、もし年利9.4%で運用できれば、1億円になります。実は、投資元本は974万円ですが、運用において複利で回していけば、1億円になるのが投資です。これがお金に働いてもらうということであり、大学卒業後の22歳から働いたとすると、62歳ではゆうゆうとした生活を送ることができます。
――投資診断協会以外にも運営されている会社もあるとのことですが。
私が経営している主な会社や団体は次の通りです。
- 株式会社Nexus (住まいるFP資格発行・不動産コンサルティング・スポーツ事業)
- 一般社団法人相続ファシリテーター協会(相続・空家対策を全国ワンストップで担う協会)
- 一般社団法人日本パデル協会 (ニュースポーツ「パデル」を日本に普及するための協会)
- 株式会社PLUG (医師の有料職業紹介事業)
――今後の方針については。
「投資診断士®」、金融経済教育の「マネティ」、「投資診断ブレイン」が3本の柱ですが、この柱をそれぞれ強化してまいります。このうちの「マネティ」は学校と法人が対象でしたが2024年7月に新たな挑戦を開始しました。幼稚園や保育園の未就学児を預けているご両親向けの金融経済教育をスタート。お子さんがいると一番の不安はやはりお金で、これだけ人口が減っていく中で大学を選ばなければ全入できる時代です。
大学進学率も過去最高の55%を越え、将来的にお金がかかることはほぼ確定しています。今のお子さんが小さいうちから教育資金を準備する必要があります。そこでご両親向けの金融経済教育が必要となるため、実施に踏み切ったわけで、これは行政と連携し行っています。
会社概要
団体名称 | 一般社団法人投資診断協会 |
所在地 | 東京都新宿区舟町4番地18 四谷コアビル3階 |
TEL | 03-6447-4104 |
代表理事 | 高松 伸吾 |
事業内容 | 投資に関する知識習得のための研修・教育等 |
公式HP | https://toushishindan.com/ |
公式「投資診断士®」HP | https://entry-ida.com/ |
公式マネティHP | https://monety-ida.com/ |
投資診断ブレイン | https://toushishindan.com/brain.php |
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