「団塊の世代」が全員75歳以上になる今年は、高齢化がさらに進むことから「2025年問題」と呼ばれています。大相続時代も本格化し、大量の不動産が市場に供給するといわれています。
しかし、その不動産の中には、共有持分や再建築不可物件の訳アリ不動産も多いのも確か。この訳アリ不動産を扱うには相当な不動産の知識や高いレベルの資格が求められています。
そんな中、権利関係が複雑な不動産分野に特化して事業を展開する株式会社SA(酒井康博社長)は創業以来、不動産の共有不動産(共有持分/共有名義)の解決、接道を満たしていない再建築不可物件などを得意としています。年間1万件の相談実績、300件の売買実績を誇り、国土交通省から登録講習期間に指定され、宅建願書にも記載されている不動産会社であり、信頼性も高いです。
三大国家資格の一つの不動産最高峰の資格、不動産鑑定士を保有する酒井社長を始めとした訳アリ不動産専門チームで24時間365日対応。酒井社長は2018年6月にSAを起業し、国土のわずか5%しかない宅地の有効利用を理念に掲げています。今回、酒井社長に訳アリ不動産の現状や実際の解決事例をうかがいました。

株式会社SA
酒井 康博社長
国土の5%に留まる宅地の有効活用を理念に

――まずSAさまの会社概要からお願いします。

私は中央大学法学部卒業後、一般財団法人日本不動産研究所などに在籍。共有持分、空き家、再建築不可物件などの訳アリ不動産への問題意識は強く抱いていました。
私は、日本不動産研究所在籍時に、借地借家法を含め、権利関係の仕組みはかなり難しいのですが実地に即した内容を多く学び、それで独立して訳アリ不動産を取り扱うSAを2018年に設立、代表取締役に就任しました。
国土のわずか5%しかない宅地の有効活用を理念に掲げ、流動性の低い不動産を蘇らせる流動化事業を展開しています。大手デベロッパーは、再開発により多くのビルを建設し、一方、国の施策として埋め立てを実施し、使用できる国土を広げようと試みています。そこでSAでは、停滞している不動産の有効活用が国土の再利用につなげると考えました。
売上的には7年目の今年度では、約55億円。ニーズは一言で申し上げますと、かなりあります。SAはほぼ広告費はかけておりませんが、日々問い合わせは殺到しています。物件所有者は、高く売りたい意向はお持ちですが、それよりもストレスから解放されたいとの思いの方が強いです。話し合いでかなり辛い想いをされたようで煩わしい人間関係から早く逃れたいとこぼされる方は多いですね。
自分一代で住むのであれば再建築物件にニーズも
――最近のYouTubeなどの動画で「再建築物件は買うな」という警鐘を鳴らしている方もいますが。



YouTube動画の「再建築不可物件を買うな」の趣旨は私も理解していますが、これは人によります。たとえば相続を考えると再建築不可物件の方が評価は低く、再販する価格も安くなりますので相続資産としてあまり優れた不動産ではありません。
ただし自分一代だけで居住できればいいというニーズも多い。たとえば渋谷区広尾で一軒家を購入しようとすれば2億円の物件があると仮定しますが、これが再建築不可の物件であれば、5,000万円で購入可能かもしれません。しかも広さもそれなりにあり、お子さんのいないご夫婦が広尾に住みたいとお考えの方にニーズはあるのです。これが郊外であればもっと安くなります。
70代になると賃貸への引っ越しは困難に
――そういえば高齢者の方が賃貸で借りられない話はよく聞きますがこういう方にもニーズがあるのではないでしょうか。



年齢が70~80歳になると賃貸に引っ越すのは難しくなります。特に大手が賃貸されている賃貸物件であれば、審査で落ちます。理由は孤独死や病死により事故物件になるからです。たとえば、現金があって20年先の賃貸料を払うから入居させて欲しいと言っても断られます。それはお金のあるなしではなく、オーナーが事故物件になることを恐れているからです。
そこで再建築不可物件を探し、自分一代で住まわれるための不動産として活用する事例が増えています。人によるとは今申し上げた理由で、価値を見出される方も中にはいらっしゃるのです。
他にもある 再建築不可物件のメリット!!


――再建築不可を購入するメリットは他にもありそうですね。



価値の高い不動産を購入すると、固定資産税や都市計画税を毎年高い税金を払う必要があります。また、古くなればリフォームも必要です。また、次の代へと引き継げば高い相続税もかかり、よくいわれるように三代で財産がなくなり、事実上に国へ返しています。それを理解されている方は高額な不動産は購入せず、再建築不可物件を購入されます。
――購入される方の属性を教えてください。



再建築不可物件はお金持ちでない方が購入されるイメージですが、基本ローンが組めないため、一定のお金をお持ちの方です。そのため、貧困層が購入されるようなイメージはあると思いますが、現実は異なる部分もあります。
――今、事業で一番多い内容はいががですか。



一番多いのは、今申し上げたように再建築不可物件で、事業件数の60%を占め、次に共有持分と底地が20%ずつです。ただし再建築不可物件の数は多いのですが、一件ごとの売上は小さいです。これが売上高構成比になると、共有持分が50%、再建築不可と底地が続きます。共有持分の件数は少ないのですが、一件ごとの額が張ることに起因します。そこで売上構成比と件数に差が生まれるのです。
共有持分はなぜ生まれるのか!?
――それでは次に共有持分※についてうかがいたいのですが何故生まれるのでしょうか。



これは親御さんが亡くなってそれぞれのお子さんが相続した時に生まれる事例が一番多く、かつ誰も不動産を使用されていない実態も増えています。
仮の話をすると三人の兄弟で貧富の差が生じた場合を示します。長男は裕福でお金の心配がないため、とりあえず現金化せず思い出の実家を残したいと考えますが次男はどちらでもいいと任せています。しかし三男は今でもお金が欲しいから不動産を売って現金化を望まれ、三人それぞれ意見が割れた状態があります。
また、三人とも仲たがいし、話し合いのテーブルにも立たない状態が続いて、兄弟の一人が当社に相談を持ち込まれるケースが多いです。兄弟円満であれば話し合いで解決しているでしょう。
――相談を受けた際は、SAさまが共有持分を購入するイメージでしょうか。



そうです。たとえば1/3の共有持分を売りたいというご相談があればその部分を購入いたします。共有持分の解決は金銭でしかありません。最終的な解決方法は、当社に残りの2/3の共有持分を売っていただくか、あるいは当社の共有持分と合わせて不動産全体を売る方法もあります。
※共有持分・・・不動産を複数名で所有し、それぞれの持っている所有権割合のことを「共有持分」と呼ぶ。一つの不動産を3人で平等に所有している場合、各共有持分は1/3となる。


――他のケースでは。



また、当社が持つ共有持分を長男が購入するケースがあります。たとえば三男と長男が険悪で口も利かない状態が続いていましたが所有者が当社に変われば買いたいと意志決定されるケースも多いです。
長男と三男の人間関係が円満であれば直接、三男から購入していたでしょうが、仲が悪いと連絡もつきません。当社が所有すると、「それなら買いたい」と意思決定されます。従来、経済合理性を考えずに争っていたものが、所有者が変わると、「買った方が得」と経済合理性で考えるようになります。
2025年は大相続時代の到来
――2025年には「団塊の世代」が全員75歳以上になり、これから大相続時代が来るといわれています。そこで再建築不可や共有持分の物件も大量に市場に供給されると予測されていますがこの点について。



再建築不可や共有持分について大変問い合わせやニーズが高く、特に売りたいとご相談を寄せる方が多いですね。今後、このビジネスを展開される業者が増えないと、対応できなくなる時が来ます。大手参入は、粘り強く時間もかかる理由で消極的です。そのため、上場企業には向かないビジネスと推察いたします。
ただ、間違いなく訳アリ不動産を扱う業者は増えています。気にかけてみないと分からないものですが、都内の四ツ谷、神楽坂、古くからの街であり台東区浅草周辺、墨田区八広、東墨田など、再建築不可物件はたくさんあります。これから相続が発生すると、非常に多くの再建築不可の物件が市場に供給されます。
――なかなか大変ですね。ところで他社のケースですと投資のお金については投資家から募っているケースもありますが御社の場合はいかがですか。



自分にはこだわりもありすべて自己資金で賄っています。実は創業当初は、投資家の方を募った物件が2件ありました。ただ、投資家であるがゆえに、そろそろ売って欲しいとなどの投資家の要請もあり、当社のスケジュール通りに進まない事例がありました。また、無理な交渉をしなければ時間的に難しいケースもあり、私たちにとってはいい仕事が出来なかったのです。
そこで規模は大きくなくとも自己資金で行えば、お客様が「半年考えるから待って欲しい」との要請があれば待てて余裕のある交渉ができるのです。現在、株式も100%私が保有しています。
――今、年間でどのくらいの相談が寄せられ、売買実績のほどはいかがでしょうか。



1日30~40件の連絡があり、営業チームも80人で構成し、年間合計で1万件の相談をこなし、年間売買実績は300件に及びます。私自身も宅地建物取引士と不動産鑑定士の資格を取得し、知識と資格で他社と比較して優位性はあります。


新宿区や府中市の訳アリ不動産の解決手法を解説
――SAさまで具体的な物件をもとに、解決プロセスを公開されています。そこで立地の良い新宿区北新宿に所在するアパートではどのように解決されていましたか。



これは立地が文句なしにいい場所にありましたが、「築年数が極めて古い」「高齢入居者多数」のほか管理はオーナー自らが行い、正直建物の状況はよくありませんでした。オーナー様はご自身での管理では限界を感じられ、そこで当社はまず管理会社を入れて、管理を見直しました。調査したところ入居者はご高齢の方が多く、引っ越しが出来ないことが分かったので、室内をリフォームしました。
賃貸契約書も自己管理でしたので、契約が切れていたり、賃貸契約書と別の方が住まわれていたり、それを正確な賃貸契約書とすることとし、投資物件として売却しました。ポイントは管理が悪いものを変えて、賃貸契約書も正確に整理し、物件はそれほど変わってはいませんが内容を整えることで、売却できた事例です。
従来は誰も購入しなかった物件でしたが、リフォームを施し、入居者や建物の管理をしっかりし、投資家の方がすぐに買いたいという物件に蘇らせました。
――次に府中市片町の物件ですが。



こちらの物件は、「再建築不可」「築年数が古い」「入居者多数」「事故物件」という複合的な課題を抱えていたアパートです。事前内覧の制限、改修工事の困難さ、事故物件の告知義務などの課題が背景にあったのです。改修を経て物件の収益化と円滑な売却を実現しました。
ここは不動産仲介会社でも断られたため、オーナーが当社のHPにアクセスし、「こちらの物件を購入していただけますか」との要請がありました。当社では入居者全てに手紙を出し、結論からいえば大規模工事は不要で必要最低限の改修に留め、物件の総額を落とすことにより、長年こちらのエリアの物件を探していた方がいて、その方が購入しました。
このような物件の家賃は4万円くらいで、どんなにきれいにしても6~7万円にはなりません。そこで雨漏りを防止する必要最低限の改修に留めることで、投資額を張らず流動化を高くしたのです。
強固な不動産仲介会社とのネットワーク
――こういう物件はどこから連絡が来るのでしょうか。



約7割が不動産仲介会社からの連絡で、他3割はネット関連です。当社は基本的に買取会社ですから、不動産仲介業者に訳アリ不動産で販売できない不動産があれば当社にご紹介くださいと営業をかけます。もし物件があると当社にご紹介いただいて、買い取り、その際は仲介報酬も支払います。そこで当社の営業チームは不動産仲介会社に営業をかけています。
これはネットワークが大切ですから、カバーしている地域は1都3県(神奈川・千葉・埼玉県)の不動産仲介会社に熱心に足を運んでいます。ただ、訳アリ不動産を扱っている会社はそれほどありませんので分譲住宅向けの土地を仕入れるハウスメーカーと比べ競争は激しくありません。
4月から再建築不可物件の大規模リフォームで建築確認必要に


――ところでこの再建築不可物件で国として動きがあるようですが。



2025年4月1日に改正建築基準法が施行され、4月に着手する再建築不可物件のフルリフォームにも確認申請が義務化されます。そこで施主の方は工務店やリノベーション会社に対して3月までの着工を希望されている方が多く、再建築不可物件のリノベーションの相談で混みあっている話をうかがっています。
実は改正法を読み込んでいくと、畳の入れ替えやトイレの交換は問題がありませんが、間取りの変更などは難しくなり、2025年4月以降は当社も含め同業他社はかなり慎重になっています。これから行政の力がかなり求められます。
当社も訳アリ不動産を購入し、リフォームを施し、売却をするビジネスモデルだったのですが、リフォームも厳しくなります。
――再建築不可物件での建築確認申請がおりるのは難しくなるのですか。



恐らく再建築不可物件での建築確認はおりなくなるのではないでしょうか。ですからそのままにしていくと物件は、朽ち果てていきます。広い道路に面していれば再建築が可能な物件です。しかし、その隣の物件は狭い私道にしか面していませんから、再建築不可物件で、さらにその隣も同様です。
もしこのようなケースであれば再建築可能な物件と一体化して整備するしかありません。これは簡単なことではありません。ちょっとした木造戸建てバージョンの再開発ですが、個人間でこのやり取りを実施するのは困難です。不動産会社が間に入り、一体化していくべきです。
今までは再建築不可物件でも大規模リフォームは可能でしたが、これから再建築不可物件は減少すると考えます。恐らく国としては再建築不可物件を無くしたい意向があるのかもしれません。それを考えると理解できる法改正です。その理由は、震災などによる火災の広がりを抑えたい意向があるかもしれません。
資金確保を着実に進め、ビジネスを拡大へ


――今後のビジネスのご予定は。



ビジネスを拡大したいと考えています。ただお金を得たいという動機よりも1件でも多く解決していくためには件数が必要です。無理はしませんが着実に右肩上がりになるようにしていきたいです。
そこで株式を発行することで資金を調達するエクイティ・ファイナンスは、株主の意見にビジネスが左右されますので望ましくない。金融機関などからの借入れるデット・ファイナンスは利息をしっかりと払い続ければ、特段ビジネスに注文を入れられることはありません。そこでデット・ファイナンスによる借入れを拡大し、資金確保を考えています。


会社概要
会社概要 | 株式会社SA |
本社所在地 | 東京都千代田区紀尾井町3-12 紀尾井町ビル6F |
電話番号 | 03-6265-6838 |
代表者名 | 酒井 康博 |
公式HP | https://sakk.jp/ |
不動産 | 共有不動産(共有持分・共有名義) https://sakk-mochibun.jp/ |
公式X | https://twitter.com/SA20180628 |
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