山梨県北杜市にあり、八ヶ岳連峰の南麓に位置する清里高原。南アルプス・富士山にも囲まれた自然豊かな場所です。
高原には、牧場、登山・トレッキングなど、観光だけでなく、アクティビティに恵まれ、アウトドアフィールドとしても魅力いっぱいです。
今回は、標高1,200メートルの高原で多くの自然やグルメなどを堪能できる魅力について、NPO法人清里観光振興会の小坂さんに話をうかがいました。

NPO法人清里観光振興会
小坂さん
幻想的な眺望が各地域で見られる高原

――清里高原のご紹介からお願いします。

清里高原は山梨県の北部に位置し、長野県との県境にございます。正面に富士山を望み、北側には八ヶ岳、 西側には南アルプス、東側には秩父連峰と四方を山々に囲まれている高原で、標高は1,000m前後です。
それぞれの四季に楽しみ方があり、のどかな牧場、各種スポーツ、登山、トレッキングなど、観光だけでなく、豊富なアクティビティなどに恵まれ、アウトドアフィールドとしても魅力的な地域です。
清里高原を開拓した、2人の偉人




――今では年間を通して多くの観光客が訪れている清里高原ですが、どのような歴史があったのでしょうか。



東京都水道局の小河内ダム建設のために土地を追われた方などにより開拓され、旧国鉄(現:JR東日本)清里駅を中心に観光地として発展しました。
そこで開拓に当たり、2人の偉人を紹介します。一人は、ポール・ラッシュ博士で、「清里の父」とも称えられ、清里開拓の功労者です。アメリカ・ケンタッキー州出身で関東大震災で被災したYMCA再建のため来日、その後は立教大学で教鞭を執りました。一度は太平洋戦争で中断しますが、戦前から戦後にかけて、清里で新しい農村コミュニティの建設に尽くし、酪農をこの地で盛んにし、公益財団法人キープ協会(2012年により公益財団法人認可)を創設しました。
このキープ協会とは、キリスト教精神に基づき指導者養成施設として1938年(昭和13年)に建てられた「清泉寮」(せいせんりょう)を運営する団体で八ヶ岳南麓に森や牧草地など約240ha(約東京ドーム50個分)の広大な敷地が広がっています。この清泉寮は清里高原のシンボルで、現在では宿泊、地元の食材を活用した料理、自家製ソフトクリームの販売やジャージー牛放牧などを楽しめ、今や観光名所の一つです。





次は、安池興男(やすいけ おきお)氏です。興男氏は当時農林省から県へ出向してきた技官で、農業指導を始め開拓民を指導。清里は別名「山梨の北海道」とも言われるほど寒く、農作物を作る上では、大変な苦労がありました。
興男氏は自らの生活を顧みず支援を続けました。具体的には開拓民への肥料の提供や分教場建設の協力などです。この興男氏の尽力は、開拓民との歴史とともに今もなお語り続けられています。
自然が豊かで、動物との共存も魅力


――清里の魅力について教えてください。



今、清里を開拓された偉人2名を紹介しましたが、その歴史から見る清里らしさを強調したいです。清泉寮を運営するキープ協会があるからこそ、ポール・ラッシュ博士が歩まれた足跡を見ることができ、異国情緒を感じられます。
また、キープ協会が主体となり、人間と環境とのかかわりについて理解と認識を深める環境教育を重視しています。たとえば、多様性に富む清里の自然を活かし、専門の知識と経験を持つレンジャーが、数多くのプログラムを開発・実施しています。
1938年に東京の水源確保のためダムの下に沈んだため、丹波山村や小菅村の人々が清里に移住することになり、興男氏は自然をできるたけ破壊することなく、清里を開拓し、発展していった開拓精神は今なお、清里の人々に息づいているのです。
さらに動物との共存も大きな魅力です。自然が豊かな場所ですから、キジ、鹿などと出会う機会も多くこちらも環境教育に通じていると思います。街が発展し、建物を建築していくと、自然がなくなることもありますが、清里は環境とのバランスを考えた街づくりを心がけています。
どんなときでも心が和み、癒される場に


――そうした自然との調和を大切にしたいですね。ところでバブルの時は、清里ブームがありましたね



バブル時代の清里観光は、今でいうオーバーツーリズムでした。今の清里は自然と人との共存や環境教育などに力を入れております。
どんなときにもいらしても心が和み、癒されるような場所です。清里駅周辺はかつてはアイドルショップやファンシーショップなどで賑わいがあったのでしょうが、今は、お土産屋さん、宿泊所、カフェなどがあり、ホッとするような地域になっています。
以前は、高原の原宿と呼ばれた地域で、それはそれで楽しかったかもしれません。ただ、心がとても穏やかで休まっていた場所であったかといえば、それは違うと思います。今が本来あるべき清里高原かなと思います。
「萌木の村」「清泉寮」などの魅力あふれる観光スポット


――次は観光スポットについて教えていただけますか。



どの季節にいらっしゃるかで楽しみ方は異なるのですが、「萌木の村」(もえぎのむら)や清泉寮などはテレビを始めとするメディア取材がよくあります。
萌木の村は1年を通して楽しめるよう設計されており、レストラン、ホテル、ビール醸造所、カフェ、メリーゴーラウンド、オルゴール博物館、各種クラフトショップやギフトショップおよび工房が集まる複合観光施設です。
英国出身のランドスケープデザイナー ポール・スミザー氏が、無農薬・無化学肥料で監修するガーデンがあり、四季折々の表情をお楽しみいただけます。観光バスも止まりますので、観光地としてはじめて清里を訪問された方は、まずは萌木の村に行かれます。







次に「ともにこの森」は、清里産の原料を中心に作られる4つのフードファクトリーショップが集まるモール。乳製品の「清里ミルクプラント」、良質の大豆からつくられる大豆製品の「だいずや」、フルーティーなジャムを作る「清里ジャム」、採りたて旬の素材を使い、一つ一つ丁寧に作られた焼き菓子やケーキなどの「アングーテ・ア・ラ・カンパーニュ」から構成されています。いずれも清里ならではのお店です。







先ほども紹介した、清泉寮は、萌木の村と同様メディアで取り上げられています。清泉寮のジャージー牧場は観光牧場ではないため立ち入れは禁止ですが、隣接するファームショップではジャージー牛を見学可能です。ジャージハットでは、皆さんがイメージされるソフトクリームも味わえます。こちらも環境教育の一環として山梨県立八ヶ岳自然ふれあいセンターで自然と動物を学べ、環境と教育が共存するエリアです。
清里エリアで最も標高の高い場所に位置する「サンメドウズ清里」は夏と冬の両方を楽しめる施設です。夏にリフトで登ると「清里テラス」があり、標高1,900メートルに達する山頂エリアでの絶景が広がり、冬はスキー場になります。





最近、人気なのは、山頂から動力のないカートで一気に駆け降りる爽快感満点の乗り物「G-KART(ジーカート)」です。コースは直線を駆け下りるスピード感とコーナーリングが楽しめる難易度の異なる2種類を用意、小学3年生以上で身長120㎝以上ならだれでも楽しく安全に乗ることができます。







「美し森」は、赤岳の東尾根の一部が孤立してできた標高1,542メートルの小高い丘で、レンゲツツジの群生が咲き誇る名所。6月中旬から下旬にかけて約1,000本のレンゲツツジが咲き誇ります。学校関係やハイキング、トレッキング愛好家が楽しまれ、秋の紅葉の景色は素晴らしく、毎年いらっしゃる方が多いです。ちなみに紅葉は10月下旬から11月中旬がシーズンです。
カヤックなどアクティビティ体験も満載!!


――アクティビティ体験が可能な所も豊富とうかがっていますが。



当振興会は、地域を周遊するピクニックバス(4~11月)、高原のため電動アシスト付き自動車、EVトゥクトゥク、雪が降る期間のスノーシューレンタルを運営。バスは、清里の主要な観光地域を回ることができます。
また、八ヶ岳アウトドアアクティヴィティーズが運営されているアクティビティ体験では、春は新緑、夏は青空と爽やかな風、秋は紅葉を楽しみながら、水上の世界を満喫できるカヤック、萌木の村の中や林間の遊歩道を散策するセグウェイを体験できます。
――清里ではスイーツが有名ですが。



当振興会でも紹介しているのですが、「清泉寮ジャージハット」「清泉寮ファームショップ」「ミルクポット」「萌木の村 ROCK」「メリーゴーラウンドカフェ」「ホームメイドケーキ・キャロル」「パティスリー アン・グーテ・ア・ラ・カンパーニュ」「農園レストランUMAGOYA(うまごや)」「アルチザン パレ ド オール」「清里レストラン&コテージ睦」の10店舗を紹介しています。
清里ではソフトクリームを楽しむイメージを抱く人は多いですが、ソフトクリーム以外にも様々な種類のスイーツを味わえますので是非、食べ比べで様々なスイーツをお楽しみください。
世界が認めた「清里ラガー」


――お酒ではビールが有名のようですね。



その中でも有名なのが「清里ラガー」。麦芽・ホップ・水に加え、コンスターチ、地元北杜市高根町のお米「梨北米」を主原料とし、ゴールドの液色はとても美しいです。特徴は昭和のビールを思わせるような、懐かしく軽やかな味わいで、キレのあるのどごしを堪能して下さい。
ちなみにイギリスのParagraph Publishing社が2007年から毎年開催している国際ビール審査会「World Beer Awards(WBA)」では、世界最高賞といわれる「ワールド・ビア・アワード2023」を受賞しました。
単なる観光地ではなく、持続可能な地域づくりを目指す


――清里高原を訪問される観光客にメッセージを。



当振興会は、自然のなかで学び癒される、人と文化が息づく地域をテーマとして、単なる観光地ではなく、自然と人との共存を大事にし、地域で活躍する魅力あふれる人々が中心となり、「持続可能な地域つくり」を今後も進めていきます。
私個人的には、幼少期から特別な場所であった清里に北杜市観光地域おこし協力隊として都心部からきた身として、改めてこの自然からの恵みあふれる地域は人と自然の調和がもっとも大切になる場所だと思っております。
それと同時に非日常的な景色や空気が日常として流れる特別な場所だと感じていますが、それはまぎれもなく、魅力あふれる、ある意味キャラの濃い、地域の皆様が清里を愛し、大切にして作り上げているからです。
非日常が日常なこの清里を唯一無二な自然と調和する観光地として残していければと思い、日々を過ごしています。
高原の酪農景観、地域で活躍する人々との連携を
――今後、貴振興会の方向性としては。



地域の発展のため、これまで様々な事業、活動を展開してきました。清里を他の地域とは違う特別な場所として発展させていくためには、開拓時代から受け継いできた文化や高原の酪農景観、さらに地域で活躍する魅力的な人々を結び付け、連携していく必要があります。
私たちは先人から譲り受けたこの土地を、さらに魅力あふれる地域として発展していくよう3つの基本理念のもと、住民の英知を結集して「持続可能な地域つくり」を進めていきます。
この3つの基本理念とは、「学びと癒しの場所へ」「人と環境にやさしく、美しい景観」「人が活躍できる地域」です。
美しい山々に囲まれ、移住者も増える山梨県北杜市


――どちらから移住されたのですか。



私は、東京からの移住者ですがこの基本理念をもとに自然との調和を大切にしたいです。実は、バブル時代にいらした方が最近、ご家族とご一緒に訪問されることが多いです。今後は世代を超えて愛される場所であってほしいです。
ちなみに、私は幼少期から家族と一緒に清里を訪れて子供のころから深い愛着がありました。北杜市観光地域おこし協力隊に応募し、たまたま配属がこの当振興会でしたので、自分の希望先でしたのでとても嬉しく思います。
――こちらの地域への移住者も多いのでしょうか。



北杜市全体に移住者が多いと感じています。日本有数の美しい山岳景観に恵まれ、首都圏から車で2時間の近い距離にあり、アクセスもよいことから、年間を通じて多くの人が訪れます。清里も同様、この高原地帯に別荘も多く、移住しやすい場所と思います。
もし北杜市への移住にご関心がありましたら、北杜市移住・定住ポータルサイトで情報提供していますので、一度、ご覧になられて検討されて見てはいかがでしょうか。
施設概要


団体概要 | NPO法人清里観光振興会 |
住所 | 〒407-0301 山梨県北杜市高根町清里3545 清里駅前観光総合案内所「あおぞら」 |
TEL | 0551-48-2200 |
会長 | 舩木良 |
公式HP | https://kiyosato.gr.jp/ |
公式Facebook | https://www.facebook.com/kiyosato.kanko/ |
公式X | https://x.com/kiyosato_aozora |
公式Instagram | https://www.instagram.com/enjoy_kiyosato/ |
コメント